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東京地方裁判所 昭和32年(ワ)433号 判決

原告

片山金

被告

渋谷安毅

主文

被告は原告に対し、金十六万五千円及びこれに対する昭和三十二年二月七日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は、被告の負担とする。

この判決は、原告において金五万円の担保を供するときは、仮りに執行することができる。

事実

(省略)

理由

原告が昭和三十一年七月十三日被告から金二万円を返済期昭和三十二年一月十二日、利息月三分の約で借受け、その債務の売渡担保として原告主張の電話加入権を譲渡したことは当事者間に争いない。

証人片山聰明の証言によれば、原告は被告に対し、昭和三十一年九月十三日までに右借用金の元利金を完済をしたことが認められ、この認定を左右する証拠はない。ところで、売渡担保物は、その担保する債権の弁済を受けるまで売買名義により担保物の所有権を債権者に移転し、弁済期までにその弁済を受けるときは、債権者はこれを債務者に返還する義務を負うものである。従つて被告は、貸金の返済を受けた昭和三十一年九月十三日原告に対し、右電話加入権を返還する義務を負つたものである。しかし、被告はこれより先同年七月十三日訴外横山商店に対し、売渡担保として右電話加入権を譲渡し、その名義を変更していたことは、当事者間に争いないから、特別の事情のない限り、右返還義務は履行不能となつたものと認められる。よつて、被告は原告に対し、右履行不能による損害賠償として、同年九月十三日当時の右電話加入権の価格相当の金額を支払うべきであるが、同日のその価格が金十六万五千円であることは、前記証言により認められる。以上により、被告は原告に対し、金十六万五千円及びこれに対する訴状送達の翌日であること記録上明らかな昭和三十二年二月七日から完済まで、民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払義務あること明らかである。

よつて、原告の請求を認容し、訴訟費用の負担について民事訴法第八十九条、仮執行の宣言について同法第百九十六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 岩村弘雄)

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